析出硬化系ステンレスについて

みなさん、こんにちは。
今回は、析出硬化系ステンレスの熱処理についてのお話です。

析出硬化処理とは、固溶化熱処理後に析出硬化(時効硬化)を人工的に行う処理です。
600番台のステンレスの他にベリリウム銅や一部のアルミニウム合金(2000番台、6000番台、7000番台など)に対して行われる処理です。

代表的な鋼種は、SUS630とSUS631があります。
SUS630はマルテンサイト系析出硬化ステンレス鋼(17Cr-4Ni-4Cu-Nb)で、Cuの添加により析出硬化性を付与し、シャフト類やタービン部品、スチールベルト素材などに使用されます。
固溶化熱処理(S処理)後に、H900(470~490℃)からH1150(610~630℃)の4段階に規定された析出硬化処理を行う事によって高強度、高硬度を得る事ができます。
SUS631はセミオーステナイト系ステンレス鋼(17Cr-7Ni-Al)で、Alの添加により析出硬化性を持たせ、スプリングやワッシャー、シャフトなどに使用されます。
固溶化処理(S処理)後に、T処理、R処理、C処理などのマルテン化処理を行ってから、H処理(析出硬化処理)を行います。
硬さ、耐力、引張り強さなどは、T処理の方が優れますが、バネ性を持たせるならR処理が必要です。
また、固溶化状態では非磁性ですが、析出硬化処理後は強磁性になります。

当社では、析出硬化系ステンレスの熱処理も行っています。
R処理時に必要な深冷処理の設備もござますので、お気軽にお問合せ下さいませ。

株式会社メタルヒート / ステンレス・真空熱処理 / 愛知県安城市
HP:http://www.sus-heattreatment.jp   TEL:0566-98-2501

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製品の固着について

みなさん、こんにちは。
今回は、熱処理工程での固着についてお話します。

熱処理工程での固着は、拡散接合によっておこる場合が多くあります。
拡散接合という現象は、接合技術で利用される事があり、「母材を密着させ,母材の融点以下の温度条件で,塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して,接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法」とJISで定義されています。接合面にインサート金属という媒介を挟んで行う場合もあります。
つまり、金属同士を押し付けた状態で一定の温度をかける事によって起こる金属原子の拡散を利用して部品を接合させる事ができるのです。

この現象は、熱処理工程においては意図せず条件が整い発生してしまう事があります。
特に薄物製品を大量に処理した時などは、固着をはがす時に製品が変形してしまうなどの不具合の発生要因となる場合があり、我々にとっては悩みの種になる場合がしばしばあるのです。
拡散接合の条件を抑制する為に「温度を下げる」、「加圧を減らす」など行う事で解消できるのですが、温度条件は目的をもって設定しているので大幅な変更は難しく、かといって加圧を減らす為に製品の投入量を減らせば、1個当りの単価が上がりコスト面で競合力を失ってしまいます。
また、拡散接合は高真空度下で促進される為、常圧に近い状態で熱処理を行う事も一つの手段ですが、製品の光輝性に影響が出てしまう場合があります。
我々は40年の経験と知識の蓄積により、この様な様々な面から、製品毎にベストな工程を選定して、お客様にご提案しています。
なかなか難しいのですが・・・(^^

それでは、また来月もよろしくお願いします。

株式会社メタルヒート / ステンレス・真空熱処理 / 愛知県安城市
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ステンレス鋼の種類

みなさん、こんにちは。
彼岸も過ぎ、少しずつ秋の気配を感じるようになりました。

さて、今回はステンレス鋼の種類について、少しお話させて頂きます。
ステンレス鋼は非常に種類の多い鋼材で、JIS規格だけで約80種、メーカーブランドも加えると200種以上あり、今も新しく増え続けています。
これらのものを大きく分類すると次の5つの系統に分ける事ができます。

・オーステナイト系
・フェライト系
・二相系(オーステナイト系+フェライト系)
・マルテンサイト系
・析出硬化系

この中で最も多く使用されているのがオーステナイト系ステンレスで、ステンレス鋼の中でも特に耐食性に優れ、成形性、延性、靭性などの面でも優秀です。
耐食性に関しては、一般的にCr、Niの含有量が多く、C量が少ない程優秀です。
しかし耐食性ひとつとっても耐塩酸、耐硫酸、耐フッ素、耐純水、耐塩水など用途に応じて材料の選定が必要です。
代表的なものとしては、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316などが挙げられます。
また、これらをベースにさらに耐粒界腐食性を高める為、C量を少なくしたL材(SUS304L、SUS316Lなど)もあります。
他にも加工硬化性が高く、バネ材として使用される事の多いSUS301は、ニコニコ大百科に載っている唯一のステンレス鋼として有名です。なぜ載ってるんでしょうね?

当社では、豊富なステンレス鋼の処理実績からお客様のニーズに合わせ最適の熱処理をご提案するだけでなく、材料選定からのご相談もお受けしております。
さて、今回お話したオーステナイト系ステンレスですが、耐食性と硬度の両立が困難な事が多くのお客様の悩みの種となっており、当社へもたくさんのお問合せを頂いております。
その辺のお話もまた改めてさせて頂きたいと思っています。
今回はこの辺で、また来月もよろしくお願い致します。

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「Teachingビジネス」について

みなさんこんにちは。
今回は少しブログの主旨から話が逸れますが、社内で立ち上げた新規事業についてご紹介させて下さい。

菱輝技術センターでは、「Teachingビジネス」として熱処理の研修・教育事業を始めました。
内容は「熱処理の基礎」、、「JIS規格から最新のものまでの鋼材紹介」、「真空・浸炭・高周波・窒化処理など各熱処理・表面処理の技術」、「金属熱処理技能検定の対策」、「設備の取扱い」、「品質管理の行い方」、「実際の工程における不具合の発生とその対策例」など多岐にわたり、社内講習に留まらず、外部講師を招いての講習や提携企業での社外講習、実習なども取り入れています。
また、これらの項目からご希望に合せて必要な部分を選択して受講する事も可能で、期間も一日から一カ月まで自由に決めて頂ける仕組みとなっています。

今年から金属熱処理技能検定において、要素試験(実技試験)の一部が変更になり、実際に硬度の測定や歪み量の測定、火花試験などを行う事が無くなります。受験者数の増加にともない試験の簡素化、効率化は必要な措置ですが、実務的な経験を一切経ないままでも技能士としての資格を得られる事へ不安を感じる方も居られるのではないでしょうか。
また、熱処理設備の導入にあたって技術者の確保にお悩みの場合もある事と思います。
本格的な始動は今秋からですが、すでに研修生の受入れも行っております。
もし、ご興味をお持ち頂けたなら是非お気軽に菱輝技術センターへお問合せ下さいませ。

それでは、来月もよろしくお願い致します。

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真空炉と水素雰囲気炉その2

みなさんこんにちは。
さて、前回に引き続き当社の熱処理設備の話をさせて頂きたいと思います。
今回は、連続式水素雰囲気炉の特徴についてご紹介します。

当社は、コンベア式の水素雰囲気炉を1基保有しています。
ベルトコンベアにより一定の速度で炉内に製品を送り込む方式の為、必要な量だけを処理する事が可能な点がバッチ式の真空炉との大きな違いです。この特徴により、コストが真空炉の様に投入量に左右される事無く、安定するのは大きなメリットです。
他にも、毎時100kg超の処理能力を有し、大量生産への対応が可能である点、常圧下で処理を行うので製品同士の固着が起こりにくい点、水素による還元効果により高い光輝性を発揮できる点など様々な利点が上げられます。(※当社では真空炉でも水素雰囲気での熱処理が可能です)
ただ、水素ガスを使用する為に処理温度域は、800℃~1200℃と限定されます。
また、小物・薄物の処理には適しますが、大物・肉厚物には不向きです。(コンベアスピードを調整してある程度は対応可能ですが、処理時間が延びるとコストへの負担が大きくなります)
加圧冷却が行えない為、冷却速度のコントロールが困難である事も真空炉と比較した場合はデメリットと言えるでしょう。

当社では、お客様のご要望にお応えする為、この様な真空炉、水素雰囲気炉それぞれの特徴を最大限に活かした提案をさせて頂きます。
ステンレスの熱処理の事でお悩みがある時は、どうぞお気軽にご相談下さいませ。
それでは来月もよろしくお願い致します。

株式会社メタルヒート / ステンレス・真空熱処理 / 愛知県安城市
HP:http://www.sus-heattreatment.jp   TEL:0566-98-2501

水素雰囲気熱処理:http://www.metalheat.co.jp/h2/

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真空炉と水素雰囲気炉その1

みなさんこんにちは。
さて、このブログについてですが、今後は月に1回程度のペースで更新していく予定です。
どうぞお付き合いの程、よろしくお願い致します。

今回は、弊社の熱処理設備に関して、真空炉と水素雰囲気炉それぞれの特徴を紹介させて頂きます。
真空炉は、その性質上真空連続炉も含め全てバッチ式です。
その為、1チャージでの最大投入量は限られますが、当社の超大型真空炉であれば、
容量:高さ1300mm×幅1300mm×長さ1650mm、最大処理量:1500kg/グロス
と大物や長尺物、重量物への対応が可能です。
また、炉内温度や保持時間も幅広く設定できる為、お客様からの様々な要望に対して、最適の処理条件をご提供する事ができます。
つまり様々な処理条件に対応できる汎用性の高さが最大のメリットです。
デメリットとしては、処理量が炉の容量とマッチングしない場合には非常に高コストになってしまう点があります。
例えば、薄物量産部品などを密着させて処理した場合に高真空状態では拡散接合が促進され、製品同士の固着の原因になります。これによって製品に変形等不具合が発生する可能性があるのも真空炉の特徴ですが、その際、製品の投入量を減らす事で品質の確保を図れば、その分の処理費の個単価が上がってしまいます。
この様な品質の確保とコストの抑制のバランスを如何にとるかという問題とどう向き合い、どういう解決策をご提案できるのか?このお話はいずれ実例を挙げてご紹介させて頂きたいと思います。

長くなりましたので今回はこの辺で。
次回は、水素雰囲気炉の特徴と真空炉との違いなどをご紹介させて頂きます。
来月も是非ご覧頂ける様よろしくお願い致します。

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ステンレス熱処理.COMホームページ

みなさんはじめまして。菱輝技術センターです。

今回弊社の新しいホームページ「ステンレス熱処理.COM」をアップしました。
ステンレス鋼は、その高い耐食性、耐熱性から過酷な環境下での使用が可能であり、
また、強度も高く製品の軽量化を可能にするなど非常に優れた鋼材です。
この様なステンレス鋼への皆様の様々な疑問に対して金属熱処理メーカーとしての立場から
お答えし、より良い製品を造る為に少しでもお役に立てないかという思いでこのホームページを
立ち上げました。
これから是非お付き合いの程、よろしくお願い致します。

なお、弊社のホームページは他にもございますので、ご興味をお持ち頂けたら
下記URLより是非ご覧下さい。
【メイン】              http://www.rtc.co.jp/ 
【大物・長尺物】         http://www.heat-treatment.jp/
【金属熱処理ソリューション】  http://ht-solution.jp/

 

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